奈良の紅茶つくりびと
みとちゃ農園
(栢下 かやした 裕規さん)
もの静かだけど、熱い想いを秘めて作る、なつかしい味、やさしい香り、山のお茶。
山添村役場での聞き取りを終え、岩田さんの事務所へ、地元の宵祭りの最中にも関わらず、
みとちゃ農園の栢下裕規さんが、快く訪れ、お話を聞かせてくださいました。
裕規さんは、大阪府枚方市出身の若い新規就農家です。
お茶農家を志し、数年間の研修を積んだあと、縁のあった自然豊かな山添村へご夫婦で移住しました。
2012年から裕規さんがスタートした「みとちゃ農園」は 無農薬・無肥料の茶と野菜を作っています。
裕規さんが奈良市内のお茶屋・心樹庵さんで、心ひかれたのが釜炒り茶、熊野番茶です。
和歌山県熊野地方の天日干しの釜炒り茶で、地元に伝わる日常茶として、僅かに作られている大変希少なお茶。
心樹庵の米山さんに紹介され、裕規さんは熊野で釜炒り茶を学び、釜炒りに心酔されたそうです。
5月になると山添村より半月ほど新芽が速い熊野で、
裕規さんは釜炒り茶の研修を続けています。
自園の「みとちゃ農園」の一番茶が終わると、今度は静岡へ行き、2番茶で釜炒りをされている方のもとで研修。
静かに、一言 一言伝えてくださる裕規さんでしたが、
その内容は、ほんとうにびっくりするくらい、熱い! 頭が下がるようなお話でした。
裕規さんが作られているのは「いろは」熊野製法の釜炒り茶です。
無農薬・無肥料で育てた一番茶葉を台湾製のドラム式釜炒り機で殺青後、
天日でじっくり乾燥させ、最後に強めの火香を付けて仕上げるお茶。
そして、「ひふみ」は冬越し晩茶。
春整枝という、一番茶の前に刈り取る茶葉で作るお茶。
基本2番茶は摘まない裕規さんは、夏の太陽を浴びてのびのび育った葉をそのまま越冬させます。
奈良の厳しい冬を乗り越えた、新芽を出す前の強い葉を、刈り取り、
釜炒りし天日乾燥し、揉まずに仕上げています。
「いろは」も「ひふみ」も物事の初め、スタートを現しています。
裕規さんの静かだけど、強い熱い思いが込められた、素敵な名前だと思います。
大和美人 緑茶品種(おくゆたか、やぶきた)2番ウンカ芽使用
7月から8月にかけ、奥さまと手摘みしたウンカ芽を使って、裕規さんが初めての紅茶を作りました。
手摘みなので、製茶出来たのはわずか2キロ。とても貴重な紅茶です。
作られた紅茶のネーミングは? と尋ねると少し躊躇いながら、それでもはっきりと
目指しているは 「東方美人」のようなお茶なのです。だから
大和高原で作った「大和美人」ですと。
量が少ないので、萎凋させた茶葉を茶袋に入れ、揉捻を掛け、バスケットで乾燥させました。
蓋碗を使って、何煎も楽しんで欲しい裕規さんのお茶です。
裕規さんは、最後に地元の「やまとみどり」品種も育てたいと新たなチャレンジを語ってくれました。
「やまとみどり」の釜炒りに逢える日が待ち遠しいです。
2016.11.11
地紅茶サミット世話人会
紅茶研究家 高橋彰子
【茶園情報】
みとちゃ農園 栢下かやした裕規
Tel : 090-8395-4449
Mail : mitocha.nara@gmail.com